愛しても、いいですか
「…そっか、そんなことが…」

2階の隼にぃの部屋で机を挟み向かい合って座っていた大石さんは、私の話を相槌を打つでもなく、急かすでもなく、最後まで静かに聞いてくれていた。

話し終えると、カチ、カチ、カチ、と壁掛け時計の秒針の音がやけに耳につく。

私はと言うと、止めどなく涙が溢れてきてもう制御不能だ。何とかティッシュで涙を堰き止めようとするも、何枚使っても涙は止まらない。

「辛かったね」

大石さんの手が伸びてきて、またわたしの頭をわしゃわしゃ撫でた。

こくん。

私は頷くことしかできない。

「沙耶香ちゃんが素直だと何か調子狂うな…」

大石さんが苦笑する。

「こんなに素直に自分の気持ちを話して泣いている沙耶香ちゃんを、その男に見せてやりたかったな」

そっと側に来て空になったティッシュの箱を私から取り上げて、新しいティッシュを渡してくれながらそんな風に優しく言うから、さらに涙が溢れた。
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