愛しても、いいですか
「…私の涙返せー」

冗談ぽく、隣の慎太郎をグーパンチしてやる。

「はは、ごめんごめん。俺、沙耶香のこと可愛げないとか本気で思ってなかったし」

なんだ、そうだったのか…
散々人のこと可愛げがないとか言っておいて…

でも、"可愛げがない"呪縛が1つ解けた気がする。
すっきりした気持ちでミモザをひと口飲むと、


「…沙耶香、今付き合ってる奴とかいなかったらさ、俺と付き合ってくれない?

俺、この8年、沙耶香ほど好きになれる奴、見つけられなかった」

さらに驚きの告白をされた。

「…え?」

戸惑っていると、

「返事は今すぐじゃなくていいから」

そう言って、次の瞬間には慎太郎はサラッと話題を変えていたー

ーーーー

結局2杯目を飲み終わった後私たちは店を出て駅で別れた。

電車に揺られて、窓に映る自分の顔のその先の景色をぼーっと眺めながら慎太郎のことを思い出していた。
< 110 / 184 >

この作品をシェア

pagetop