愛しても、いいですか
「沙耶香が恋してこんなになっちゃうなんて、びっくりだなぁ。ほんとに大石さんのこと好きなんだね」

目尻を下げて優しく微笑む親友の言葉に、

自分でもびっくりだよ…と心の中で呟く。

私は今、恋をして自分が自分でなくなるという感覚を生まれて初めて味わっている。
自分はこんなキャラだっただろうか…

そう思っていると、

「そう言えばこの前ロビーで副社長と一緒だった人、副社長の婚約者らしいね!すごくお似合いだったよねー」


私の斜め後ろからそんな声が聞こえて来て、はっとなる。

由紀もはっとなって私の斜め後ろの席をチラッと見る。

「うちの受付の子たちだ…」

振り返ることが出来ずにいると、由紀が小声で教えてくれた。

会社近くのカフェだから、社内の人と出くわすことはよくある。
だからこそ、会話をする時は最新の注意を払っている。
さっきもかなりひそひそ声で話していたし、店内はお昼時で賑わっているのでさっきの話を彼女たちに聞かれてはいないと思う。
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