愛しても、いいですか
ただ、彼女たちはまあまあ大きな声で喋っているので、その言葉は嫌でも私の耳に入って来てしまった。

…婚約者…?

いきなり頭から冷や水を浴びせられた気がした。
口がカラカラに渇き、瞬きも出来ない。

「沙耶香、大丈夫…?」

と言う由紀の声をどこか他人事のように聞きながら、私は精一杯の笑顔で大丈夫、と答えた。

その後、由紀が何か言ってくれていたような気がするが私の頭にはさっぱり入って来ず、自分がどう受け答えしたのかも覚えていない。

ーーーー
ーー

かなり動揺したものの、何とか今日の業務をこなして、定時より1時間過ぎた18時頃会社を出た。
でもまっすぐ帰る気にはなれず、どうしようかと思っていると慎太郎からLINE。

『これから飯でもどう?』

ちょうど良かった。1人でいると色々考えてしまうし、この前の返事も慎太郎にまだちゃんと出来ていないままだ。
今日ちゃんと伝えよう。

『いいね。どこで待ち合わせる?』

するとすぐに既読が付き、

『今どこ?』

『たった今会社出た所』

そう返すと、

『近くまで来てるからそのままそこで待ってて』

そうして会社前の街路樹の下で待っていると5分くらいして慎太郎がやって来た。
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