愛しても、いいですか
ーあの時、期間限定の彼氏になると言い出した時、大石さんは言った、彼女はいないと。
彼女はいないけど、婚約者はいたのだろうか。
それともその後婚約者が出来た?
副社長という立場上そういう人がいてもおかしくない。
家柄の良いお嬢さんと、なんて良くある話じゃないか。

最近家で会えなかったのは仕事が忙しいせいだけじゃなかったのかもしれない…

もともと、会社の副社長と一平社員の私とじゃ立場が違いすぎる。
そもそも加賀美さんとのことがなければこんなことにはなっていなかったのだ、大石さんと。

…でも、婚約者がいるならば、私はもう大石さんの家にはいられない。

自分に好きな人が出来なければずっとこの生活が続けられると思っていた。
大石さんを好きだという気持ちを隠して、好きな人は出来ない、そう言っていればずっと一緒にいられると。
でも、私は気づいてしまった。
大石さんに好きな人や恋人が出来てもこの生活は続けられないことを。

大石さんはあの時ミッションコンプリートだと言った。
この同居生活の本来の目的は既に果たしている。
私はもうここにはいられない。
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