愛しても、いいですか
どのくらい走っただろう。
頭も身体も限界で立ち止まると、

「…っおい!」

不意に腕を掴まれた。

振り返ると慎太郎で、彼は私の顔を見るとびっくりしたように息を飲んだ。

「…何で泣いてんの」

…私は泣いていたらしい。

「…とりあえず、こっち」

慎太郎に手を引かれるがままについて行くと小さな公園に入った。

タコの滑り台とブランコと砂場がある小さな公園。
外回りの途中ここで昼飯食ったりするんだ、と慎太郎は小さく笑う。

18時を過ぎているので遊んでいる子供たちはもういない。
すっかり秋めいて来た風を感じながら、2人でベンチに座った。

「…で?一体何があった?」

ここへ来るまでの間、静かに涙を流し続ける私に慎太郎は言った。

何も言わない私に、

「…さっきホテルに入って行ったのって、沙耶香んとこの副社長だよな?」

こく、と頷く。慎太郎は私が見ていたものに気づいていた。
それが大石さんだったと言うことも。

「…なんで沙耶香がそれで泣くの」
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