愛しても、いいですか

「もっとそれが出来たらきっとこんなに傷つくこともないのに」

そうして私を抱き締めてよしよししたまま、何かを思案する。

「…沙耶香ちゃんは、どうしても人に甘えるの苦手？」

こくん。

「人に頼るのも？」

こくん。

「…んー、じゃあ、沙耶香ちゃんが1人で任されている仕事があったとします。その期日はもう明日。期日ギリギリに間に合うかどうかの進捗具合です。そこに上司がさらにもう１つ沙耶香ちゃんに仕事を持ってきました。これは今日中に仕上げてほしいと頼まれます。今日中に仕上げるにはなかなか厳しい量です。さあ、沙耶香ちゃんはどうする？」

突然の質問…
え…何…

でもこんな状況、確か前に実際あった気がする…

その時は確か…

「…残業して全部間に合わせました…」

「…え、間に合わせたってことは、実際にこんなことあったの？」

抱き締めていた私をわずかに離して、顔を覗き込まれる。

「…はい…」

「…1人で全部やったの？」

「…はい…」

「…手伝って欲しいってお願いしたけど手伝ってもらえなかったとかじゃなくて？」