愛しても、いいですか
でも、その言葉に私はさらにびっくりする。

「えっ、由紀のこと、知ってるの⁉︎」

ハハッ、と笑って、

「また今度種明かししてやるよ。とりあえず今は2人でちゃんと話しな」

と言って慎太郎はじゃあな、と手をひらひらさせて帰って行った。

2人きりになった路地で、大石さんがおもむろに電話をし出す。

「…あ、美咲?ごめん、今日大事な用が入っちゃって、一緒に行けなくなった。うん、ごめん。海(かい)遅れるけど来れるみたいだから。今日は2人で選んで来て。じゃあ」

そうして電話を終えると、

「今日もドレスの試着だったんだけど、海も、あ、弟のことね、遅れて来る予定だったし、俺は今こっちの方が大事」

大石さんが真っ直ぐに私を見つめる。
真剣で、力強くて、熱い眼差し。

「…沙耶香ちゃん、俺に婚約者がいると思ったから、もう一緒にはいられないって家を出て行ったの?」

…うっ。

「…は、はい…」

「慎太郎くんと付き合うって嘘ついて?」

「…はい…」

「俺、婚約者なんていないよ?」

「…みたいですね…」
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