愛しても、いいですか
玄関先で簡単な挨拶を済ませて、

「お父さんは居間で待ってますよ」

と言う母。

居間に入ると父がいつもの座椅子に腰掛けていた。

「お父さん、ただいま」

新さんと一緒に近づけば、ああ、お帰り、と父が立ち上がる。

「初めまして、沙耶香さんと結婚を前提にお付き合いさせて頂いています大石 新と申します。今、沙耶香さんと一緒に暮らしています。本当はその前にご挨拶に伺うべきだったのですが、順番が逆になってしまい申し訳ありません」

ペコリ、と大石さんが大きな身体を2つに折り父に言う。

…新さんは、そこを1番気にしていた。
私の両親にきちんと挨拶する前に一緒に暮らしてしまったこと。
でも元々一緒に暮らし始めた時には付き合ってはいなかった訳で、事情が事情だから気にしなくて大丈夫だよ、とは言ったのだけど。

「…いやいや、大石さん、そんなに畏まらなくて大丈夫ですよ!まあまあ、座ってください」

柔和な顔で微笑む父。

ね?大丈夫だったでしょ?の意味を込めて隣の新さんを見上げて微笑む。
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