愛しても、いいですか
会っていないが故に大石さんが期間限定彼氏になった実感は全く湧いていない。

「…沙耶香、何か良いことあった?」

ハンバーグランチプレートのサラダを突きながらにこにこと突然由紀にそんなことを言われて少し驚く。

「…何で?」

「んー?何となく?沙耶香、わかりにくいけど私には何となーくわかっちゃうんですよ」

ふふっと戯けて笑う。 
由紀は私と違って表情が豊かだ。155センチだとサバを読んでいるが実は153センチの小柄な身長に、緩くパーマをかけた胸下までのオレンジブラウンの髪を今日は低い位置でルーズに纏めている。女の私から見ても可愛い子だ。同じ女でも真逆の立ち位置にいる私たちだが、入社した時からずっと仲が良い。

「…うーん、良いこと、なのかな」

「沙耶香、前の彼氏と別れてから元気なかったでしょう。あんまり自分のことは言わないから無理には聞かなかったけど、ちょっと心配だった。でも先週あたりからちょっと元気になったかなって」
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