愛しても、いいですか
「荷造りは終わってる?」

眩しそうに目を細めてそう聞かれ、

「はい、終わりました」

と玄関口に置いていたスーツケースをぽん、と叩く。

じゃあ出発しようか、と言うのでちょっと待って下さい、とテレビを消してベランダの窓を閉め、鍵を掛けた。

貴重品の入ったミニショルダーをぶら下げ、トングサンダルを履いた所で、

「それ履いてくの?じゃあ仕事用の靴も一足持って行った方がいい」

そう言われた。
…?よく分からなかったけど仕事用のローヒールのパンプスも言われるままに袋に入れた。

さりげなくスーツケースを持ってくれて玄関を出る。

「大石さん!重たいので私持ちます」

「…重たいから俺が持つんだよ?」

「でも…」

「俺は沙耶香ちゃんに甘えてもらうための彼氏なの。だから、甘えて?」

ね?と優しく見つめられれば、そうだった、そのための期間限定彼氏だったんだと思い出す。
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