愛しても、いいですか
「…はい、すみません…」

何だか申し訳なくてそう言えば、

「そこはありがとうだよ、沙耶香ちゃん」

ふっ、と笑いながら優しく訂正される。

「…はい、ありがとうございます…」

「よく出来ました」

そう言ってスーツケースを持っていない方の手で頭をわしゃわしゃ撫でられる。

とくん。胸が音を立てた。今まで隼にぃの所で大石さんに頭を撫でられた時も、この前2階の部屋で抱き締められた時も何とも感じなかったのに、急に胸が音を立てた。

何で…?何で鳴ったんだ今。いやいや、気のせい気のせい。今のはきっと気のせいだ。そう思うことにして階段を降りる大石さんについて行った。

下に停まっていた車は艶のある黒いボディーのレクサスだった。なんて高級な車に乗っているんだ。この人、本当に何者なんだろう…
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