愛しても、いいですか
お手洗いは何処だろう、と探していると人混みの中に大石さんに似た後ろ姿を見つけた気がした。
……?まさかね。こんな所にいる訳ないか。
気を取り直してお手洗いを済ませ会場に戻ろうとした時、今まさにすれ違おうとしていたスーツ姿の長身の男性に「…沙耶香…?」と声を掛けられた。
…誰?と思ってよくよく顔を見れば、

「…慎太郎⁉︎」

高校の時の同級生、伊東 慎太郎だった。
サイドを刈り上げたツーブロックヘアで、くりくりの瞳は高校の時の面影そのままだ。

「やっぱり沙耶香か!久しぶりだなー!成人式以来?6年ぶり⁉︎」

慎太郎が興奮した様子で私の手を取りぶんぶん振り回す。

「…慎太郎、痛いから。落ち着いて?」

苦笑いしてそう言うと、ああ、悪い、と謝って手を離してくれる。

「どうしてここに?」

「うちの会社の専務の娘の婚約パーティーなんだ」

小声で答えてくれる。

「え…!てことは慎太郎、 ODホールディングスの人?」
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