愛しても、いいですか
…気持ち悪い。…離して…
そう思うのに身体に力が入らない。
自分が思っているよりも酔いが回っているのかもしれない。

「…やめて下さい…」

自分の口から出た声がびっくりするほど頼りなくて驚いた。

「え、何?ねぇ、一緒に行こうよー」

グイグイ引っ張られる。

もう、どうしたら…

「…大石さん…」

来るはずのない人の名前を呼び、いろんな感情が込み上げて来ていよいよ泣きそうになった時、

「…っ沙耶香ちゃんっ!」

会いたくて会いたくてたまらなかった男の声がした。それと同時に後ろから抱き締められる。

それに怯んだ2人組が、掴んでいた私の腕を一瞬離した。
その隙に大石さんは自分の後ろに私を庇うように隠す。
165センチの私が、大石さんの背中にすっぽりと収まる。
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