愛しても、いいですか
ーそれが1年前。
お付き合いは順調に進んでいたものの、付き合って半年ほど経った頃からだろうか、加賀美さんはことあるごとに「沙耶香は俺のこと本当に好き?」と聞くようになっていた。
本当に好きだった。その気持ちに嘘はない。
でもこれまで両想いというものを経験したことのなかった私は、彼に甘える、愛情を表現するという普通の女の子なら普通に持ち合わせているであろうその術を持ってはいなかった。
そしてそもそも、私は自分の感情を表に出すことが苦手だ。
家庭環境が少し影響しているかもしれない。
私の今の母は、私が中学1年生の時の父の再婚相手だ。血は繋がっていない。
母の方にも当時5歳の連れ子がいて、私にも分け隔てなく本当の母親のように優しく接してくれたが、何となく私がしっかりしなくちゃ、私が甘えちゃいけないという気持ちが強かった。
その体質が染み付いているが故に、仕事でミスをして泣きそうなほど落ち込んだ時も、彼に甘えることはできなかった。
「大丈夫?」と聞かれて「大丈夫じゃない」と言うことができなかった。
いつもだいたい1人で自己解決してきたから、
誰かに頼るという習性がなかった。
そんな可愛げのない私に彼はついに
「別れよう」そう告げた。
そうして1ヶ月前彼は私の元から去り、そして今日、彼と取引先の専務の娘との婚約が発表された。
お付き合いは順調に進んでいたものの、付き合って半年ほど経った頃からだろうか、加賀美さんはことあるごとに「沙耶香は俺のこと本当に好き?」と聞くようになっていた。
本当に好きだった。その気持ちに嘘はない。
でもこれまで両想いというものを経験したことのなかった私は、彼に甘える、愛情を表現するという普通の女の子なら普通に持ち合わせているであろうその術を持ってはいなかった。
そしてそもそも、私は自分の感情を表に出すことが苦手だ。
家庭環境が少し影響しているかもしれない。
私の今の母は、私が中学1年生の時の父の再婚相手だ。血は繋がっていない。
母の方にも当時5歳の連れ子がいて、私にも分け隔てなく本当の母親のように優しく接してくれたが、何となく私がしっかりしなくちゃ、私が甘えちゃいけないという気持ちが強かった。
その体質が染み付いているが故に、仕事でミスをして泣きそうなほど落ち込んだ時も、彼に甘えることはできなかった。
「大丈夫?」と聞かれて「大丈夫じゃない」と言うことができなかった。
いつもだいたい1人で自己解決してきたから、
誰かに頼るという習性がなかった。
そんな可愛げのない私に彼はついに
「別れよう」そう告げた。
そうして1ヶ月前彼は私の元から去り、そして今日、彼と取引先の専務の娘との婚約が発表された。