愛しても、いいですか
…で、ファスナーを下ろしてもらって服を脱ぎ捨てようとしたら大石さんが「ちょっ!ちょっと待って!」って慌てて私に背を向けたんだった…

その服はちゃんとハンガーに掛けられてクローゼットの前に吊るしてあった。
大石さんがやってくれたのだろうか。

今日は土曜日だけど、大石さんは家にいるだろうか…
昨日の歩道橋でのこと、帰宅してから醜態を晒してしまったこと、会って謝りたいけど、でも会いたくないような…

顔を洗って歯磨きをして、最低限の身支度を整えてから恐る恐る自分の部屋を出てリビングに向かう。
ドアを開けると、ソファーに腰掛けていつものようにパソコンと向き合っている大石さんがいた。

「…おはようございます…」

そっと声を掛ける。パソコンから顔を上げて、

「…あ、おはよう。体調は大丈夫?」

と優しく微笑んでくれる。
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