愛しても、いいですか
「…あっ、でも沙耶香ちゃんが脱ぐ前に急いで背を向けたから見てないよ⁉︎」

大石さんが慌てて付け加えた。

「…あ、はい、それもちゃんと覚えてます…」

「…で、ちゃんと着替え終わったのを見届けて、ベッドに寝かせて部屋を出た」

「…だから酔っ払った沙耶香ちゃんを襲ったりはしてないよ?」

ちょっと理性は飛びそうになったけどね…
ごにょごにょ、と付け加えられたそれは、あまりの羞恥心で死ねる勢いの私の耳には届かなかった。

襲ったりしてない…そのセリフに、まだ私の顔はこんなに赤くなれたのか、というくらい今度こそ真っ赤になった。

「…!おっおっ大石さん、なっなっ何を…!」

分かりやすく動揺する私を見てハハ、と大石さんが力なく笑う。

でも、たらしの大石さんがよく耐えてくれたと思う。来るもの拒まず、据え膳食わぬは男の恥、そんな諺がぴったりの大石さんが、酔っ払って無防備に服を脱ぎ出した女を襲わずにいてくれたなんて。

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