愛しても、いいですか
そうか、あの時社員証を見られていたのか…

「…で、その泥酔っぷりが心配で、一緒に飲んでた女の子速攻で駅まで送り届けて、沙耶香ちゃんのヤケ酒に付き合った」

…そうだ、あの時大石さんは私が来るよりも先に女の人と飲んでいて、私が来てしばらくしてから彼女、送ってくる、と隼にぃに声を掛けて出て行った。彼女の方はえ⁉︎何で⁉︎って、めちゃくちゃ不満げだったのを覚えてる。

20分くらいして戻って来た大石さんに、送り狼にならないなんて珍しいですね、と憎まれ口を叩くとうるさいよ、と小突かれて、でもその後私の隣でずっとヤケ酒と愚痴に付き合ってくれた。帰りも家まで送り届けてくれた。

ーあの時から、大石さんは知っていたんだ。

「…内緒にしてて、ごめんね?」

そう可愛く覗き込まれてまた謝られた。

「…もうそんなに謝らなくていいです、別に、怒ってないですから」

苦笑して見つめ返せば、ほっと安堵の表情を見せる。
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