愛しても、いいですか
その後、ごめん、つい、と大石さんは私をパッと離した。

…全然嫌じゃない。手を繋ぐのも、抱き締められるのも、頭を撫でられるのも。

でも、それは伝えられない。
だって大石さんは私の期間限定の彼氏であって本当の彼氏ではないのだから。

私に次に好きな人が出来るまで、それまでにその人に甘えられるように、頼れるように、自分の気持ちを言えるように。
そういう自分になるための、言わば練習台になってくれた仮の彼氏。

この関係を始めた時、誰が思っただろうか、まさか本当に大石さんのことを好きになってしまう日が来るなんて。

いつも違う女の人を連れて飲みに来ていた"たらし"の大石さん。

飲み友達の枠を越えて一緒に暮らすようになってから知った、"たらし"だけじゃない一面。
知れば知るほど好きになる。
もう止められない。
気づいた途端持て余してしまったこの気持ちを、私はどうしたらいい…?

果たして、私はこのまま大石さんと一緒に暮らしていて良いのだろうか。

「…由紀にも心配掛けちゃったので、ちょっと連絡して来ますね」

何とかそれだけ言うと、私は逃げるようにリビングから離れたー
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