花乙女は愛に咲く
(1)
パンッ!
乾いた、頬を叩く音が部屋に響く。リンファスの父、ファトマルがまた、母、アルネアの頬を叩いたのだ。
また父が母に花乙女の為に国から施される付与金について足りないと不満をぶつけていた。
父が母に暴力を振るい、罵倒するのは何時もの事。父は国から守られている花乙女の母を妻にしたにもかかわらず、今ではその付与金で遊んで暮らしている。父が母に寄せる愛情はお金だけのものとなり、母に咲く花は何時も枯れている。
そんなみすぼらしい母の姿を子供の頃から見てきたから、リンファスは花乙女になりたいとは思わなかった。
しかし花乙女の血筋の為、リンファスは王都に召し上げられる。

(2)
花なしのリンファスは他の花乙女と交わらず、寄宿舎で雑用係と世界樹の世話をして暮らす。
奨学金を実家に送って自分は残飯を食べているので、周りの花乙女から奇異の目で見られるのをリンファスは知っていた。
ある日とても体調が悪く、医務室で点滴を受けることになった。花乙女への点滴は花の蜜をチューブを通して花乙女の体に取り込むもので、天井に花が咲き誇る医務室で、チューブに繋がれながら一人横になっていた。
花の蜜が身体に入ってくるにつれ体調がよくなっていくのを感じ、リンファスは改めて自分が花乙女なのだと気付く。
その様子を隣の敷地の建物から花騎士見習いが見ていた。その人物こそ王室の鬼子、ロレシオだった。

(3)
寄宿舎の花乙女たちは定例の舞踏会に出かけてしまうが、リンファスは花も咲いていないので寄宿舎で留守番。
着飾って出かけていく花乙女たちを見て、花が咲かない自分を振り返り、惨めな気持ちになる。
(こんな惨めな思いをして、花も咲かないなら、家に帰りたい。でも家に帰ってもお金を入れられなければ居場所はないし……)
せめてと居場所である寄宿舎で、集めた花の蜜を絞っていると、舞踏会を終えた花乙女たちが帰ってくる。
口々に舞踏会の話で盛り上がる中、彼女たちから医務室で点滴を受けていた花乙女を探している人が居たと聞く。
何の用事だろう、その人も奨学金を寄越せというのかしら?とリンファスは、父親を思い出して不安になる。
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