御手洗くんと恋のおはなし
ようやく立ち上がった大谷を、満は「やっぱりデカいな」と見上げた。満も高い方ではあるが、大谷はそれ以上でとにかく目立つ。
そんな二人に、隣のコートから声がかかった。
「なぁなぁ、こっちとも試合してみない?」
それは隣で同じく合同授業をしていた三年生だった。
声をかけてきた相手に、満の細い目が一瞬見開く。
坂本智也。和葉が今片想いしている、いわば満の恋敵だったからだ。
「え、良いんすか?」
「おう、先生もオッケー出してくれたし」
誰にでもすぐに打ち解けられる大谷は、坂本と笑って会話をしている。
満も人の良い仏顔を貼り付けて、恋敵に声をかけた。
「坂本先輩、バスケ部じゃないですか。手加減してくださいよ?」
すると坂本は、爽やかな笑みを満に返した。
「そっちはデカいの二人もいるんだ。加減してたらやられちまうよ」
憎めない笑顔だ。和葉もこの笑顔にやられたのだろう、と満が考えたとき。
どこか見覚えのある顔がチラリと体育館入口から見えて、満はそちらへ近寄った。
やはり、である。
「何してんの、カズ」
「うわぁ、みーちゃん目ざとい!」
同じくジャージ姿の和葉。女子は外でバレーのはずだったが。
「サボってまで坂本先輩見に来たの?」
「違う違う! 突き指しちゃって保健室行ってたの」
「体育館に来る理由にはなってないけど?」
「う……いいじゃん、ちょっとくらい」
満は、ほんの少しだけ口を尖らせる。
「今から俺たち、三年生とゲームするけどどっち応援する?」
「え、そりゃもう坂本先ぱ──ぴゃあっ」
ペチコン、といつもより強めにデコピンを和葉に送る。
一瞬の迷いもなくライバルを応援されては、恋する少年の立場はない。
そんな二人に、隣のコートから声がかかった。
「なぁなぁ、こっちとも試合してみない?」
それは隣で同じく合同授業をしていた三年生だった。
声をかけてきた相手に、満の細い目が一瞬見開く。
坂本智也。和葉が今片想いしている、いわば満の恋敵だったからだ。
「え、良いんすか?」
「おう、先生もオッケー出してくれたし」
誰にでもすぐに打ち解けられる大谷は、坂本と笑って会話をしている。
満も人の良い仏顔を貼り付けて、恋敵に声をかけた。
「坂本先輩、バスケ部じゃないですか。手加減してくださいよ?」
すると坂本は、爽やかな笑みを満に返した。
「そっちはデカいの二人もいるんだ。加減してたらやられちまうよ」
憎めない笑顔だ。和葉もこの笑顔にやられたのだろう、と満が考えたとき。
どこか見覚えのある顔がチラリと体育館入口から見えて、満はそちらへ近寄った。
やはり、である。
「何してんの、カズ」
「うわぁ、みーちゃん目ざとい!」
同じくジャージ姿の和葉。女子は外でバレーのはずだったが。
「サボってまで坂本先輩見に来たの?」
「違う違う! 突き指しちゃって保健室行ってたの」
「体育館に来る理由にはなってないけど?」
「う……いいじゃん、ちょっとくらい」
満は、ほんの少しだけ口を尖らせる。
「今から俺たち、三年生とゲームするけどどっち応援する?」
「え、そりゃもう坂本先ぱ──ぴゃあっ」
ペチコン、といつもより強めにデコピンを和葉に送る。
一瞬の迷いもなくライバルを応援されては、恋する少年の立場はない。