御手洗くんと恋のおはなし
満が女の子の相談事をよく受けるようになったのは、おそらく小学生時分にまでさかのぼる。
特別なイケメンというわけではないが、優しげな細い目元、仏顔とよく言われる安心感を与えやすい満は、女の子にとって話しやすい異性だったようだ。
初対面でもすぐに女の子と打ち解けられる満の交友範囲は、どちらかというと男子よりも女子の方が多くなっていく。
そしてそんな彼の生活は、女の子の悩みや愚痴、相談を受けることが多くなった。
満自身もそれを苦とはしていなく、むしろ女の子が笑顔になるのなら……と、どこかフェミニストな彼は喜んで耳を傾けていた。
それは中学高校となっても変わらず、思春期男子としてはいかがなものか……と問いたくなるスタンスであるが、本人は気にしていない。
そんな満は、自分のお気に入りの場所である中庭のベンチに相談者の梨花を招いた。
まだ昼食中の生徒たちはチラホラいるが、距離は遠い。ここなら相談話には最適だ。
満、梨花、和葉が並んで座った。
「じゃあ、どうぞ」
「う、うん」
満に促され、梨花は小さく戸惑いながらもぽつぽつと話し始めた。
「あの、男の子にこんなこと話すのはすごく、恥ずかしいんだけど……その……」
奥歯にものが挟まったような言い方に、少しだけ満は身構える。和葉が梨花の腕にそっと手を添えて、励ましていた。
「私、よく……痴漢に遭うの。高校生になってからは電車も使うし、そこでも遭って……。最初は彼氏も、他校だけどボディーガードしてくれて、でも出来ない日はやっぱり遭ったりして……。彼氏には『お前に隙があるんじゃないの』って言われたりするし……」
梨花は、グッと下唇を噛みしめた。