御手洗くんと恋のおはなし
◇ ◇ ◇
試合で坂本が負けたら、涼子を諦める。勝ったら、涼子が避けている理由を満が探る。
球技大会にて、坂本とそんな賭けをした満。
しかし、彼には当日思わぬ誤算が舞いこんでいた。
「何で今のが反則なわけ!?」
と叫ぶ大谷に、
「だから、ダブルドリブル! 二回しちゃダメなんだって」
と訴える審判生徒。
背の高い大谷に責められ怯える審判のために、満は同情して大谷を止めた。
「前も教えただろう、大谷」
「えー、そうだっけ?」
大谷がはてと首をひねるので、本当に分かっているのか……と満は不安げに見つめた。
満のクラスのバスケチームで、残念ながら欠員が続出していた。
どうやら仲の良いメンバーで鍋パーティーをしたが、その中の何かに食あたりをした……らしい。
急遽他のクラスからメンバーは借り出された。早々に敗退していたとなりのクラスから、背が高い大谷でよかろうと決めたのは誰だ、と文句を言いたかったのは満だけではないはずだ。
「いいか大谷、お前はゴール下にいろ。無理してドリブルしなくていいから」
「それはつまんねぇなぁ」
バスケまでゴールキーパーかぁ、とうなだれる大谷には申し訳ないが、坂本との勝負前に敗退では満に立つ瀬がない。
何とか勝って次は坂本のクラスとの対戦だが、大丈夫かなと満はアゴを手でさする。
そんな満の背後から声をかけてきたのは、坂本だった。
「よう、ギリギリの試合だったな。これなら余裕で勝てそうだ」
さっきの試合を観ていたのだろう。不適な笑みに、満も負けじと微笑み返す。
「ちょっと予定外なだけです。油断して、足元をすくわれても知りませんよ」
「油断はしないさ。賭けには勝たせてもらう」
そう言い坂本は体育館を見渡す。その中に涼子を見つけ、彼は余裕の顔つきを一瞬崩した。