御手洗くんと恋のおはなし
しばらくして、満のクラスと坂本のクラスの試合が始まった。
トラブルメーカー大谷に若干の不安を抱きつつも、満は腰を低くして身構える。
最初のジャンプボールだけは頼りになる大谷。大きく飛び跳ね先制をしたのは、満たちのチームだった。
「よっしゃあ!」
叫ぶ大谷。
しかし、ジャンプボールというのはどこにでも弾けば良いというものではない。大谷が弾いたボールの先に味方は──いない。
「バカ、誰もいないだろ!」
思わず叫んだ満が見つめたボールの先には、敵チームの人間──よりによって坂本がいた。
「サンキュッ」
嫌味を吐き捨て、ボールをドリブルし坂本は走る。あっという間にゴールに近づき、シュートを放った。
吸いこまれるようにボールはネットをすり抜けた。と同時に。
「きゃああ!」
と聞こえたのは、和葉のミーハーな黄色い声。
(カズのやつ、どっちを応援してんだ!)
満は仏顔らしからぬ表情を浮かべ、腹を立てた。
そうして始まった不利な戦いではあったが、その後はいい試合展開になった。
坂本以外の相手チームが、あまり上手くないのも要因だったのだろう。試合終了間際には、一点差で点を取り合うシーソーゲームとなっていた。
「クソッ」
しだいに坂本の顔に焦りが出る。
ここで負けたら、涼子の真意を知らずして諦めなくてはならないのだ。
今は一点だけ坂本たちのチームがリードしていた。早くホイッスルを鳴らしてくれ、と祈りながら自コートに戻ろうとしたら。
「うおおおー!」
やけにバカでかい声を発する敵メンバーが、こちらのゴールに向かっていた。
背が大きく勢いがある。大谷だ。やばい、と坂本は腰を落とした。