御手洗くんと恋のおはなし
 あっという間に和葉はケーキを平らげて「これ、いけます!」と光一に向けて笑顔で言った。

「やった! 和葉ちゃんの太鼓判なら、バッチリね」

 光一は喜ぶとお皿を下げて、レシピをより細かく仕上げるために奥の部屋へと引っこんでしまった。
 満は、幸せそうにコップの水を飲み干す和葉に向けて微笑んだ。

「いい食べっぷりだったね、カズ」
「うっ。また御手洗親子にやられた」

 悔しそうに和葉は唸った。
 最近、和葉はダイエットを決意し、大好きなスイーツ断ちを始めたようだ。
 年頃の女の子なら一度は通る道だけれど、必要ないのにと満は思う。

「おいしいおいしいって食べた方が、女の子は可愛いと思うけどなぁ」
「でもそれじゃあ、可愛い服は着られません!」
「柔らかい方が、触り心地もいいじゃない」
「触られる相手もいません!」

 説得しようとしても、こうである。満はスッと目を細めた。

「なら俺が、触ってあげようか?」
「へ?」

 満は和葉の顔に手を伸ばし……ぐにっと、その柔らかなほっぺたをつまんだ。

「うっ」
「はは、よく伸びる」
「み、みーひゃんっ」

 とちょうどそこで、扉が開きお客が入ってきたのでパッと手を離した。
 わらわらと賑やかに入ってきたのは、若き学生たちだった。

「あ、和葉ちゃん今日はいたー!」
「こんにちはー。お邪魔しまーす」
「へぇー、ここが御手洗の店か」

 やかましく入店した三名の男子高校生は、満たちと同じ桜塚高校の制服を着ていた。
 クラスメイトの一ノ瀬、二宮、三井である。ゲッ、と満は眉をひそめた。

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