御手洗くんと恋のおはなし


◇  ◇  ◇


 なぜ和葉に、あんなカードが届いていたのかも気になったが、満はメッセージ内容も気になっていた。
『女と酒を飲む悪いやつ』──まるで満が夜のバーで働いていることを、知っているかのような書き方だった。
 考えてはみたものの、これといって思いつく人物はいなかった。

 体育の授業が終った。着替えを済ませたクラスメイトたちが続々と戻る中に満も紛れて、教室に入る。
 すると何やら、黒板前に人垣が出来ていた。
 何だろう、と通りすがりに見ると紙が貼られている。何かのお知らせだろうか、と満も皆の頭の上からそれを覗くと、どこかで見たことのある印刷文字が貼り出されていた。


『御手洗満、
 自宅の店でホストまがいのアルバイト中!
 未成年飲酒、そのままでいいのか!?』


 満は目を見開いた。人垣を分け、黒板に貼られた紙を外す。背後にいたクラスメイトたちが、そそくさと離れていく気配を感じた。
 満の自宅が喫茶店であることは、クラスメイトたちも知っているはずだ。しかしそこが、夜間バーになることを知っている者は少ない。
 いったい誰が、こんなことを。

(くだらない)

 そう心で吐き捨て紙を握りつぶすと、慌てたように和葉が近づいてきた。

「みーちゃん、気にすることないよっ」
「カズ」

 和葉の方が被害者みたいな顔になって、満に必死になって言った。

「酷いよね、誰がこんなこと……みーちゃん、確かに女の子に甘くてホストみたいだけど、ホストじゃないのに!」
「んー、それはフォローと受け止めていいのかな」

 苦笑した満を見つめて、和葉は不安そうに小さく呟いた。

「でもこれ、どういうこと? みーちゃんお店では働いてないのに……」

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