御手洗くんと恋のおはなし
◇ ◇ ◇
帰宅した満は、さっそくお店のスタッフルームにて、ある機材と向き合っていた。
それは、最近お店に設置された監視カメラの映像を映し出すモニターだった。防犯のために導入されたそれだが、機械音痴な父の光一はしばらく放置をしていたのだ。それを昨日、満がようやく設定し、映し出せるようにしていた。
残っているデータは、昨日の数字トリオ来店の様子からスタートする。和葉に変なちょっかいを出してないかと、見張るために起動させたのだった。
特に変わった様子もなく、映像は流れる。
飲み物を運んだ和葉は三人としばらくおしゃべりはしたが、他の客の来店で慌ただしく働く。
その間三人は飲み物を飲み、会話を楽しんでいる。
たまに一ノ瀬がカウンターまで和葉に声をかけに行き、二宮はテーブルでスマホばかりを弄り、三井はトイレに二回も行った。
「……ん?」
何度か再生を繰り返し、一人が怪しい行動をしていることに気がついた。
クラスメイトを疑いたくはなかったが、休み時間までにあんな風に紙を黒板に貼ることができるのは、クラスメイトぐらいだろう。
そして犯人はおそらく──あの三人の中にいる。その目星を満はつけていた。
そんなことを考えモニターを睨んでいる満の背後から、声がかかった。
「みーちゃん」
「あれ、カズ」
今日は出勤じゃないはずの和葉が、扉のところで立っていた。
学校の制服姿のまま、こちらを覗くように見ている。満は座っていたオフィス用チェアを少し回転させた。
「どうしたの。今日、バイトの日じゃないでしょ」
「だって、みーちゃん心配になっちゃって。先生に何か言われた?」
じつは、担任教師の元にも同じ紙が届けられていたらしく、放課後満は呼び出しをされていたのだ。
事前に学校からはバイト許可はもらっていたのだが、今回は飲酒の疑いがかけられたため、厳重注意をされてしまった。