御手洗くんと恋のおはなし
 自宅の経営店ということと、今回の紙が悪戯性が高いということでそこまで強くは言われなかった。
 しかしこれは、たしかに満に対する嫌がらせであった。人の良い和葉が心配するのも、無理はないだろう。

「大丈夫だよ。心配かけてごめんね」
「別に、謝らなくてもいいし」

 なぜか和葉は不満そうにそう言って、部屋に入ってきた。様子がおかしいな、と感じ満は和葉に向き合う。

「どうしたの、カズ」
「え?」
「ちょっと不機嫌みたい」
「……」

 和葉はそう言われると、居心地悪そうに腕を後ろにまわす。視線を床に向けて言った。

「みーちゃん何で、お店手伝ってたこと、私には言ってなかったの?」
「え?」
「べ、別に言わなくてもいいんだけどさ。知らなかったのがちょっとショックというか……」
「ショックなの?」

 満は首をかしげた。
 たしかに和葉は、現状満と一番仲が良い友人だろう。和葉もそれを自負しているところはあった。
 女の子の友情というのは全てではないが、「共有」という意識が絡んでくる。今回もそういう類からくる不満だろうとは思うが、友人として和葉を見ていない満としては、今の和葉の反応は少しだけ嬉しかった。
 まるで、独占欲を和葉が出しているような……。

「カズに、またホストみたいって言われそうだし」

 少しだけからかいたくなった。

「い、言わないしっ。みーちゃん、バーでは何してるの?」
「まぁカウンターでメニュー出したり、運んだり。和葉と大差ないよ?」
「そ、そう」

 そこで和葉が黙ってしまったので、つまらなくなってしまう。
 なんだ、もうちょっとかまって欲しいな、なんて満は考える。

「あとお客さんとお喋りしたり」
「へ、へぇー……。大人の人?」
「そりゃあ、バーだから」
「だ、男女問わず……」
「まぁそうだよね、普通は」
「ふぅん」

 モジモジして聞く和葉に、満の目元はますます細くなる。
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