御手洗くんと恋のおはなし
◇ ◇ ◇
一ノ瀬の自宅マンションにまで乗りこんだ満は、そのまま彼の部屋へ一緒に入った。
思いのほか一ノ瀬の部屋は殺風景で、満が予想していたような、和葉の写真だらけ……という内装ではなかった。
しかし、それでもこのクラスメイトがストーカーまがいの盗聴犯だということに変わりはない。
「ほら一ノ瀬、盗聴器を全部だせ」
ずっと掴んでいた一ノ瀬の手首を放すと。
「わかってるよ! 偉そうに指図すんな!」
乱暴にその腕を振り払い、一ノ瀬は吠えた。逆らうつもりや逃げる気はなさそうだが、反省の色などは見えなかった。
満は小さくため息を吐いた。
「なんであんなこと、したんだよ」
机の前で引き出しを漁る一ノ瀬の背中に、問いかけた。
「カズのこと好きだったら、あんな回りくどいことしなくても告白すれば良かったのに」
「……簡単に言うなよな」
ポツリと一ノ瀬が呟いた。動かしていた手元を止め、振り返らずに言葉を続ける。
「俺にとって和葉ちゃんは、つき合いたいとか告白とか、そんなんじゃないんだ」
そうして語り出したのは、彼が和葉に惹かれたときの思い出──高校二年生の四月のことだった。
「俺、高校入ってからなかなか馴染めなかったんだよ……クラスのやつと。だから二年になっても、どうせ変わらねぇって思ってた」
そんな風にふて腐れていた時期に、よく話しかけてくれたのがとなりの席の和葉だった。