御手洗くんと恋のおはなし
年は五、六十代くらいだろうか。ショートの髪に白髪が交じり、目尻には年相応のしわをつけた笑みを浮かべている。声よりも落ちついた印象のある女性が、パジャマ姿で身を起こしてお辞儀をした。
「ごめんなさい、お邪魔しちゃって」
「いえ、こちらもうるさくしてすみません」
女性に対して体をきちんと向け、満は小さく頭を下げた。すると女性は少しだけ驚いたように満の顔を見たが、すぐにまた微笑んだ。
人の良さそうなマダム。そんな第一印象だ。
「小林さん、これ、私のクラスメイトの御手洗満くんです! 通称みーちゃん!」
「『これ』も『みーちゃん』もひどいぞ、カズ」
「あ、ごめんごめん」
まったく悪びれる様子もなく、和葉は笑う。
「私は小林加寿子と申します。和葉ちゃんが来てからにぎやかで、嬉しいわ」
その女性、加寿子は本当に嬉しそうに口に手を当てて笑った。
「小林さんとはね、名前きっかけで仲良くなったんだ! 苗字も名前も、似てるでしょ?」
「はは、たしかに」
林和葉と小林加寿子。かぶることの多い名前が、となり同士の二人の垣根を取ったらしい。
親子、もしかすると祖母と孫ほどの年の差もあるが、互いに波長が合ったのだろう。和葉と加寿子は目を合わせて「ねー」なんて言い合う。
「でもね、共通点はそれだけじゃないみたいよ」
と加寿子は含み笑いをして言った。「え?」と首をかしげる和葉に、嬉しそうに打ち明ける。
「私の夫もね、みーちゃん、なの」
「ええ!」
その言葉に、満も目をパチパチさせた。「ええっ!」と和葉は話題に食いついて身を乗り出そうとしたが、足が固定されていたためあまり動けなかった。
「小林さんの旦那さんも?」
「ええ。名前は『美晴さん』。美しく晴れる、と書くのよ」
「わぁ、すごい偶然!」
「もう今はいないけれどね。穏やかな人だった」
「え?」
「若い頃に、病気でね」
「そうなんですか……」
しょぼんとした和葉に、加寿子は何でもないように笑う。
「気にしなくていいのよ、もう昔のことなんだから。それより二人はおつき合いしてるの? お似合いねぇ」
「え!」
「ごめんなさい、お邪魔しちゃって」
「いえ、こちらもうるさくしてすみません」
女性に対して体をきちんと向け、満は小さく頭を下げた。すると女性は少しだけ驚いたように満の顔を見たが、すぐにまた微笑んだ。
人の良さそうなマダム。そんな第一印象だ。
「小林さん、これ、私のクラスメイトの御手洗満くんです! 通称みーちゃん!」
「『これ』も『みーちゃん』もひどいぞ、カズ」
「あ、ごめんごめん」
まったく悪びれる様子もなく、和葉は笑う。
「私は小林加寿子と申します。和葉ちゃんが来てからにぎやかで、嬉しいわ」
その女性、加寿子は本当に嬉しそうに口に手を当てて笑った。
「小林さんとはね、名前きっかけで仲良くなったんだ! 苗字も名前も、似てるでしょ?」
「はは、たしかに」
林和葉と小林加寿子。かぶることの多い名前が、となり同士の二人の垣根を取ったらしい。
親子、もしかすると祖母と孫ほどの年の差もあるが、互いに波長が合ったのだろう。和葉と加寿子は目を合わせて「ねー」なんて言い合う。
「でもね、共通点はそれだけじゃないみたいよ」
と加寿子は含み笑いをして言った。「え?」と首をかしげる和葉に、嬉しそうに打ち明ける。
「私の夫もね、みーちゃん、なの」
「ええ!」
その言葉に、満も目をパチパチさせた。「ええっ!」と和葉は話題に食いついて身を乗り出そうとしたが、足が固定されていたためあまり動けなかった。
「小林さんの旦那さんも?」
「ええ。名前は『美晴さん』。美しく晴れる、と書くのよ」
「わぁ、すごい偶然!」
「もう今はいないけれどね。穏やかな人だった」
「え?」
「若い頃に、病気でね」
「そうなんですか……」
しょぼんとした和葉に、加寿子は何でもないように笑う。
「気にしなくていいのよ、もう昔のことなんだから。それより二人はおつき合いしてるの? お似合いねぇ」
「え!」