御手洗くんと恋のおはなし
 驚いた二人の表情に満足したかのように、加寿子はまたその写真を手帳に挟んだ。

「美晴さんはね、名前とは違って雨男だったの」

 懐かしげな表情で、窓の外を見る。

「晴れの字が入ってるのに申し訳ない、なんて、デートのたびに言われたりして。そんなことないよって言ってるのに、てるてる坊主を作って飾ったりして、可愛らしい人だった」
「……素敵な旦那様」

 小さく和葉は微笑んで、つぶやいた。それに嬉しそうに加寿子は答える。

「ええ。とってもチャーミングな人だったのよ。満くんみたいにね」

 ふいに気恥ずかしさを感じて、満は頭をかいた。

「それは、嬉しいですね」

 加寿子の瞳に吸いこまれそうな気がして、少しだけソワソワした。加寿子から感じられる、オーラというか気配はとても穏やかで、自分よりもこの婦人こそが仏様みたいだな、なんて満は思う。

 ふと視線をそらせば、病室の窓の外は曇天模様。
 週末には雨になるだろう、と言っていたニュースを、満はなんとなく思い出していた。
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