御手洗くんと恋のおはなし
「じゃあ和葉ちゃん、撮影始めようか。変にポーズ取らなくていいし、自然体でね」
「は、はいっ」
指示された和葉はギクシャクと、洋子のカメラ前に立ちつくす。
それを見て満は、いくぶんか余裕を取り戻して笑ってみせた。
「カズ、緊張しすぎ。リラックスリラックス」
「うー、簡単に言わないでよ」
「まずは適当に歩いてみなよ」
「こう?」
「そうそう」
サクサクと枯れ葉を踏みながら、和葉はゆっくりと歩く。それに満と洋子、内田もついていきながら和葉の撮影は始まった。
満は和葉が変に気張らないように、たわいない会話を投げかける。
学校生活のこと、もうすぐ来る年末年始のこと、喫茶店のこと、恋愛のこと──。
「そういえば坂本先輩、教育大学に行くらしいね」
「え、そうなの?」
「うん。もしかして彼女に影響されてかもね」
「なんでみーちゃん、知ってるの?」
「なぜかあれからよく、声かけられるんだよ。誰にも言えないから、俺にしゃべってスッキリしてるんじゃないかな」
「あはは、やっぱり仏のみーちゃんだ」
そこでパシャパシャッとシャッターが何度も切られ、洋子が「何だそれ」と笑っていた。
すっかりリラックスした和葉はカメラの存在を忘れたのか、洋子に屈託のない顔を向け余計なことを言う。
「みーちゃん、学校では恋愛相談の達人なんです! 女の子のいろんな相談にのってあげて、人気者なんですよ。あ、最近は男女問わずかな? とにかく道端の仏様みたいに、なーんかついお話したくなっちゃうんですよね」
「ほうほう」
うなずく洋子と内田に、満は少し唇を尖らせて「やめろよカズ」とつぶやいた。
「あ、みーちゃん照れてる?」
「照れてはないけど、ちょっと居心地悪いよ」
「あはは、ごめんごめん」
珍しい満の戸惑い顔に、和葉は嬉しそうに笑った。親がいる今の空間は、若干満の方が分が悪い。
でもいつもの笑顔をこぼした和葉を見て、満の心も落ちついてくる。
吹いてくる冬の風は冷たいけれど、熱くなっていた頭を冷やすにはちょうど良かったのかもしれない。
木枯らしがもたらす枯れ葉と髪とスカートの舞いが、より和葉を魅力的に見せていて、満を魅了したのだった。
「は、はいっ」
指示された和葉はギクシャクと、洋子のカメラ前に立ちつくす。
それを見て満は、いくぶんか余裕を取り戻して笑ってみせた。
「カズ、緊張しすぎ。リラックスリラックス」
「うー、簡単に言わないでよ」
「まずは適当に歩いてみなよ」
「こう?」
「そうそう」
サクサクと枯れ葉を踏みながら、和葉はゆっくりと歩く。それに満と洋子、内田もついていきながら和葉の撮影は始まった。
満は和葉が変に気張らないように、たわいない会話を投げかける。
学校生活のこと、もうすぐ来る年末年始のこと、喫茶店のこと、恋愛のこと──。
「そういえば坂本先輩、教育大学に行くらしいね」
「え、そうなの?」
「うん。もしかして彼女に影響されてかもね」
「なんでみーちゃん、知ってるの?」
「なぜかあれからよく、声かけられるんだよ。誰にも言えないから、俺にしゃべってスッキリしてるんじゃないかな」
「あはは、やっぱり仏のみーちゃんだ」
そこでパシャパシャッとシャッターが何度も切られ、洋子が「何だそれ」と笑っていた。
すっかりリラックスした和葉はカメラの存在を忘れたのか、洋子に屈託のない顔を向け余計なことを言う。
「みーちゃん、学校では恋愛相談の達人なんです! 女の子のいろんな相談にのってあげて、人気者なんですよ。あ、最近は男女問わずかな? とにかく道端の仏様みたいに、なーんかついお話したくなっちゃうんですよね」
「ほうほう」
うなずく洋子と内田に、満は少し唇を尖らせて「やめろよカズ」とつぶやいた。
「あ、みーちゃん照れてる?」
「照れてはないけど、ちょっと居心地悪いよ」
「あはは、ごめんごめん」
珍しい満の戸惑い顔に、和葉は嬉しそうに笑った。親がいる今の空間は、若干満の方が分が悪い。
でもいつもの笑顔をこぼした和葉を見て、満の心も落ちついてくる。
吹いてくる冬の風は冷たいけれど、熱くなっていた頭を冷やすにはちょうど良かったのかもしれない。
木枯らしがもたらす枯れ葉と髪とスカートの舞いが、より和葉を魅力的に見せていて、満を魅了したのだった。