御手洗くんと恋のおはなし
「え?」

 照らし出された、パネルの中の和葉。
 公園の枯れ葉と、彼女が身にまとうワンピースの黄色い裾がダンスをするように風に舞っている瞬間だ。
 写真の中の和葉は背中を向けて、笑顔の横顔を見せている。そしてとなりに、もう一人の人物。

「あ、みーちゃんも写ってる!」

 和葉がなぜか安心したように、笑って言った。
 そう、目の前の一番大きなパネルには、和葉だけでなく満もバッチリ写っていたのだ。
 おそらく、和葉をリラックスさせるために何気ない会話をしている瞬間だ。パネルの左側に写る満は、前を向いていたので顔は写ってはいなかった。
 ふと近くになった大谷たちを見やる。すると、別のパネルを見ていた大谷と美羽は、何とも変な顔をして満たちに視線を向けた。

「何?」

 と声をかけ、大谷たちが見ているエリアへ近づく。
 そこも洋子が撮った作品がいくつか飾られていたが、小さなものだったので遠目からはよく見えなかった。

「いやぁ、意味深なタイトルだねぇ」
「御手洗くん、かっこいいね! 和葉ちゃんも可愛い~」

 大谷はニヤニヤ、美羽は無邪気に笑ってそんなことを言う。
 壁のパネルに目を向ければ、そこには和葉のワンショットが多く飾られていて、やはり可愛い。
 けれどひとつだけ、和葉でない人物が写っているパネルがあった。
 それを目にした満の顔が、珍しくほんのりと赤くなり口元を歪ませる。そこから漏れた「あの人は……!」の言葉は、自由すぎる母親に対する憤慨だった。
 三人のもとに、遅れて和葉が近寄ってきた。

「あ、こっちにもまだあったんだ!」

 和葉の視線が、三人が見ていた写真に移ったので満の居心地が悪くなる。

「あれ、みーちゃんのワンショットだ! わぁ、いい感じだね」
「……そうだね」

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