御手洗くんと恋のおはなし
・ ・ ・
中学に上がった満は、友人の井本の誘いもありサッカー部に所属した。
もともと運動自体は得意だったため、それなりに楽しんで部活に取り組んでいた。
その日は一年生が初めて部活内で、ちょっとした試合をさせてもらえていた。一・二年生対三年生というチーム編成で、もちろん三年生に軍配は上がりつつある。
「御手洗ー、パスパス!」
ミッドフィルダーである満は、遠くで叫ぶフォワードの井本に視線を向ける──が、視線と反対方向へパスを蹴った。
受け取ったのはもう一人のフォワード、中嶋悠だった。
フリーとなっていた中嶋はそのまま、鋭いシュートを決めた。ようやく一点を三年生に突き返すことが出来て、ワッと歓声が上がる。
「御手洗! なんで俺にパスしてくれねぇんだよー!」
井本が抗議してくる。
「いやだって、中嶋のがいい位置にいたし」
「バカヤロ! あいつをあれ以上調子に乗らせるな! イケメンがエースじゃあ、俺の立場がないだろうが!」
思いきりくだらない嫉妬である。当の本人である中嶋は、ケラケラと明るく笑っていた。
「井本、先に点入れたんだから俺の勝ちだな!」
「ぐあー、むかつくー!」
地団駄を踏む井本の横で、満は馬をならすようにどうどう、と押さえつけた。
中嶋はサッカー部で知り合った、同じ一年生の友人だ。明るく元気、スポーツ万能、サッカー部では期待のエースとして頭角を現し始めていた。
嫌みのない性格もあってか、女子に人気があるわりに男子にも友人が多い、不思議な魅力ある男の子だった。
女の子の味方である満としては、中嶋のような優しい性格の持ち主には好感を持っていた。
年頃ゆえ女の子に意地悪になる、ぶっきらぼうだったり無視したりする他の同級生よりは、いいやつだなと素直に思っていた。
そんな試合の中でふと、満はあることに気づく。
同じグラウンドで部活動をしている陸上部。その中からこちらを見ている視線に、気づいたのだ。
(……林和葉?)
陸上部だった和葉が、片付けの途中なのかハードルを持ったままこちらを見ていた。その視線の先を追えば、誰を見ているかなんてすぐにわかった。
(……なるほど、ね)
満は見つけてしまった小さな恋の種に、優しく微笑んだ。
中学に上がった満は、友人の井本の誘いもありサッカー部に所属した。
もともと運動自体は得意だったため、それなりに楽しんで部活に取り組んでいた。
その日は一年生が初めて部活内で、ちょっとした試合をさせてもらえていた。一・二年生対三年生というチーム編成で、もちろん三年生に軍配は上がりつつある。
「御手洗ー、パスパス!」
ミッドフィルダーである満は、遠くで叫ぶフォワードの井本に視線を向ける──が、視線と反対方向へパスを蹴った。
受け取ったのはもう一人のフォワード、中嶋悠だった。
フリーとなっていた中嶋はそのまま、鋭いシュートを決めた。ようやく一点を三年生に突き返すことが出来て、ワッと歓声が上がる。
「御手洗! なんで俺にパスしてくれねぇんだよー!」
井本が抗議してくる。
「いやだって、中嶋のがいい位置にいたし」
「バカヤロ! あいつをあれ以上調子に乗らせるな! イケメンがエースじゃあ、俺の立場がないだろうが!」
思いきりくだらない嫉妬である。当の本人である中嶋は、ケラケラと明るく笑っていた。
「井本、先に点入れたんだから俺の勝ちだな!」
「ぐあー、むかつくー!」
地団駄を踏む井本の横で、満は馬をならすようにどうどう、と押さえつけた。
中嶋はサッカー部で知り合った、同じ一年生の友人だ。明るく元気、スポーツ万能、サッカー部では期待のエースとして頭角を現し始めていた。
嫌みのない性格もあってか、女子に人気があるわりに男子にも友人が多い、不思議な魅力ある男の子だった。
女の子の味方である満としては、中嶋のような優しい性格の持ち主には好感を持っていた。
年頃ゆえ女の子に意地悪になる、ぶっきらぼうだったり無視したりする他の同級生よりは、いいやつだなと素直に思っていた。
そんな試合の中でふと、満はあることに気づく。
同じグラウンドで部活動をしている陸上部。その中からこちらを見ている視線に、気づいたのだ。
(……林和葉?)
陸上部だった和葉が、片付けの途中なのかハードルを持ったままこちらを見ていた。その視線の先を追えば、誰を見ているかなんてすぐにわかった。
(……なるほど、ね)
満は見つけてしまった小さな恋の種に、優しく微笑んだ。