御手洗くんと恋のおはなし



 後日、また和葉が廊下で熱い視線をグラウンドに落としていたので、満はつい声をかけてしまった。

「カズ、中嶋を見てるんでしょ」
「みみ、みーちゃん!」

 和葉は飛ぶくらいに驚いた。
 外には、グラウンドで友人たちとしゃべっている中嶋がいた。

「な、何のこと?」
「とぼけなくってもいいって。好きなんでしょ? 中嶋のこと」
「う……」

 満が恋愛に人一倍敏感なのは、昔からだった。
 赤らめた和葉は、話題を変えようとしたのか「カズって、何?」とむくれた。

「和葉だから、カズだよ」
「なんか男の子みたい」
「そう?」
「もしかして、みーちゃんの仕返し?」
「さあ」

 笑って目を細めた満を見て、和葉の警戒心も解かれる。ふう、と一息ついて窓枠に手をついた。

「そんなにわかりやすかった?」

 中嶋への片想いのことだろう。満は穏やかに言った。

「まあね。この前の試合も見てたよね」
「あー、バレてたんだ」

 もうすっかり観念したのか、和葉はクスクスと笑った。
 こうして見ると、やはりクラス一と言われるだけの可愛らしさが和葉にはあった。中嶋とならお似合いかもしれない、と満は思う。

「……でも、失恋確実なんだ」

 和葉がポツリともらした。

「中嶋くん、他に好きな子いるから」
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