月夜の白牡丹
4. 夢にまで見た…
勢いよく障子を開けて入ってきたのは男性2人。髪を総髪に結ったキリッとした顔の男性と、優しそうな顔の月代を沿った男性。


この人…この総髪の人…
知ってる。私、ものすごく、よく、知ってる。




大好きで、大好きで、ずっとずっと、会いたくて、会えなくて、会いたかった人。



『こらっ!歳三!!!女の子が寝ている部屋にズカズカ入り込んでくるなんて!!』



『うるせぇな、一応声はかけただろ。』



『まぁまぁ、歳もノブさんも、そのくらいにして。ほら、お嬢さんも驚いて…
大丈夫かい!?なんで、泣いているんだい?そんなに、驚いたのか?』





必死に首を振る。口を開けば想いが溢れ出してしまいそうで。
ずっと、ずっと、ずっとずっと、会いたかった。






土方歳三さん。





ずっと、お会いしとうございました。
お慕いしております。





心の中で、目の前の土方歳三に伝えながら、そっと涙を拭った。





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それにしても綺麗な顔してるなぁ。


あの有名な写真でも、十分かっこいいのに、本物はそれ以上にかっこよくて、気を抜いたら倒れてしまいそうだ。



『弟がごめんねえ、びっくりしちゃったわね。』



だいぶ落ち着いて来た私に、お水の入った湯呑みを渡してくれた女性にお礼を言って受け取る。



弟。つまり、土方歳三さんのお姉様ってことは、この方がきっと佐藤ノブさんだ。
すごい人に介抱してもらっちゃった。



『おい、お前。』



ふいに声をかけられて顔を上げると、決まりの悪そうな顔をした歳三さんがいて。



『悪かったな、その、驚かせて。』


と言われた。



『いっ!!いえ!!!!そんな!!!!!
あの、それより、助けてくださったのは、あなた、ですか?』




恐る恐る聞くと、あぁ、と頷く。

どうしよう。私、土方歳三さんに助けて貰っちゃった。



『ありがとうございました、助けて頂いて。』



『いや、構わん。顔色も悪かったし、見慣れない着物を着ていたんでな。咄嗟にここへ運んだが、身内が心配していないか?』



『あ、いえ、その…』



なんて言えば良いんだ!どこから来たのか、とか心配している人がいるんじゃないか、とかいつかは聞かれることなんだろうけど、どう答えていいのか分からない。



『そういえば、名を聞いていなかったな。
名は、なんというんだ。』


よっこらせ、と私の目の前に腰を下ろした歳三さんに顔を覗き込まれ、ドキドキしながらも『成実です』と答える。


『成実か。珍しい名だが、いい名だ。』


と言って微笑んでくれた。
かっこいい。土方歳三さんが、私の名前を褒めてくれた。しかも、名前呼んでくれた。私、成実って名前でよかった。幸せすぎて倒れそうだ。

『歳は、いくつなんだ。』


私の誕生日は3月だ。今はまだ18歳。
だけどこの時代、誕生日は関係なくみんな正月に1歳歳をとるはず。だから19ってことでいいんだろうか。


『19、です』



『俺よりも結構年下なんだな。俺は、土方歳三。そっちにいるお前を介抱していたのが俺の姉貴で、近藤さんの名前はもう聞いたな?それで俺の隣にいるのが…』



『山南敬助です。試衛館道場でお世話になっています。よろしく。』


穏やかに、柔らかく、微笑んで名乗った山南敬助。
この人が…後の新選組総長。そして…。
そこまで考えて、やめた。
行く末を考えても、悲しくなるだけだ。



今ここで、この人たちに会えていることは奇跡だ。
今このときを、大切にしたい。
少しの間でも、同じ時を刻める奇跡を、大切にしたい。



思い出してしまった『知識』を振り払うように、軽く頭を振って、山南さんに会釈した。





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