罰恋リフレイン
「俺、日野と同じ部署の冬木です」
冬木さんが笑顔で自己紹介すると蒼くんも「薫と同じ高校の夏城です」と望んでもいない自己紹介をした。
お酒が運ばれてきても乾杯できる雰囲気じゃないことに気を遣ったのか冬木さんは「二人はどういう関係?」と会話のきっかけを作った。
私が「ただの高校の同級生です……」と言うとすかさず蒼くんが「付き合ってました」と言い放った。
「違います! 付き合ってないです!」
私は慌てて否定する。冬木さんに誤解されたくない。すると蒼くんは何かを言いたそうに不満気な顔をした。
「ふーん」
冬木さんはそんな私たちを見て増々口元がにやけている。
ちょうど料理が運ばれてきたから私は話を切るためにお皿に取り分け始める。
「このパスタのソースはうちと同じメーカーから仕入れてると思うんだよね」
冬木さんが頬張ったパスタを私も一口食べる。
「これは同じですね。うちのピザソースをこれでアレンジしてみますか」
「じゃあそっちに取り掛かるために、フルーツサンド明日で完成できそう?」
「ホイップにシロップをどれだけ配合すればいいかが難しくて……でも明日完成させます」
食べながら仕事の話をする私たちを蒼くんは無言で見比べる。そんな蒼くんと目を合わさないように意識していることが辛くなってくる。
一通り料理を食べてメモをすると冬木さんは立ち上がった。
「じゃあ、後は二人でごゆっくり」
「え!? 帰るんですか?」
蒼くんと二人にされたくなくて慌てる。
「俺がいると話しにくいでしょ」
笑って蒼くんに「ごめんね」というと蒼くんは「こちらこそ」と静かに言った。
冬木さんは私に顔を近づけると耳元で「ちゃんと話しなね。彼、会社に来るほど日野と話したかったんだよ」と囁いた。