罰恋リフレイン
(OverKill)
◇◇◇◇◇



香菜と校門から出て行く薫を第二体育館の窓から見送った。
俺はこれから最後の部活で、後輩と踊るのも最後だ。

薫は俺たちが付き合っていることをちゃんと隠してくれていた。
クリスマスも誕生日も会いたいとは言わなかったし、学校でも必要以上に近づいてくることはなかった。

お揃いで買ったキーホルダーを薫はカバンに付けてくれたけど、俺は目立つところには付けずに家の鍵に付けている。
堂々と付き合いたくて早く卒業したかった。罰ゲームで告白したことを知っているやつらと離れて、薫に元々嘘なんてなかったとずっと隠していける。

卒業後は一人暮らしをするつもりでいたから、部屋に薫を招くことも触れることもずっと簡単にできるはずだ。このキーホルダーは新しい部屋のカギに付ける。その合鍵を薫にも渡せたらいいなと思っていた。

「夏城くん」

体育館の入り口から氷室が顔を出している。

「ちょっといい?」

「何?」

「卒業パーティーは駅前のカラオケに決まったから。5時に集合で」

「わかった」

「じゃあね、部活頑張って」

氷室が手を振って背を向けるとカバンが目に入った。そこには薫とお揃いで買ったものと同じキーホルダーがついている。

「待って」

思わず呼び止めてしまった。

「それ、氷室も好きなの?」

キーホルダーを指差すと「ああこれ? 好きってわけじゃないけど」と氷室は微笑んだ。

「日野さんにもらったの」

「え?」

「日野さんがいらないって言ったから、貰ってあげたの」

いらない? 薫がそう言ったのか?

「そっか……そう……」

「私はよく知らないキャラだけど、なんか可愛いし」

「うん……」

自分でも驚くほど動揺した。大事にしてくれているはずのキーホルダーを薫が手放したことが信じられない。

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