エリート外科医の灼熱求婚~独占本能で愛しい彼女を新妻に射止めたい~
「……って。人の寝顔を盗み見するとかダメだよね」
「ん……」
次の瞬間、先生が小さく唸って寝返りを打った。
慌てて私は自分の口を抑えると、一歩後ろに足を引いた。
よかった……起こしてはいないみたい。
でも、こうまでしても起きる気配はなさそうだ。本当に、よほど疲れているんだろう。
白衣の胸元につけられた名札には、【近衛】と書かれている。
やっぱり、この人が特製チャーハンの依頼主の近衛先生で間違いない。
「本当にお疲れ様です。それじゃあ、失礼します……」
蚊の泣くような声でつぶやいた私は、空になった配達用バッグを持つと、足早に医局をあとにした。
心臓は未だにドキドキと早鐘を打つように高鳴っている。
病院の外に出て後ろを振り返れば、熱くなった頬を撫でる風がやけに冷たく感じた。