エリート外科医の灼熱求婚~独占本能で愛しい彼女を新妻に射止めたい~
「百合、どうした?」
黙り込んだ私を不思議に思ったらしい近衛先生が、不意に首を傾げた。
私は膝の上で両手を握りしめると、改めて今の思いを丁寧に話し始めた。
「私が今……こんなふうに、前を向いて歩き出せたのは、他でもない近衛先生のおかげなんです」
鼻の奥が、ツンと痛む。
ほんの少しでも気を緩めたら泣いてしまいそうで、私は必死に瞬きをして涙を払った。
「近衛先生が、弱い私の背中を押してくれたんです。本当にありがとうございます。私、近衛先生に出会えて本当によかった。私は本当に、幸せ者です」
ハッキリと、近衛先生の目を見て告げた。
そうすれば正面に座る近衛先生が、眩しそうに目を細めて私を見た。
「……食器、片付けないとな」
「あ、私がやります! 近衛先生は疲れているだろうし、座っていてください!」
不意に立ち上がった近衛先生を見て、私も慌てて立ち上がった。
そして、空いた食器を手早く片付けようとしたのだけれど、
「え──?」
不意に伸びてきた近衛先生の手が私の肩に触れ、そのまま後ろから抱き締められた。
「こ、近衛先生……?」
後ろに立っている近衛先生の、顔は見えない。
だけど私の身体にまわされた腕は熱くて、鼻先をかすめたシャンプーの香りにクラクラした。