エリート外科医の灼熱求婚~独占本能で愛しい彼女を新妻に射止めたい~
「佐藤副院長は、昔から俺のことを買い被りすぎているフシがあるからな」
「アハハ、まぁねぇ。パパってば、ほーんと透くんのこと大好きだし。多分、透くんが自分の息子なら良かったのにって思ってるんじゃないかな?」
ふたりの会話の内容から、ふたりが家族同士の付き合いのある仲だとわかる。
そういえば……さっき聞いた話の中で、お父さん同士が旧知の仲だって言ってたっけ。
ということは、近衛先生と梨沙子さんは、子供の頃から交流があったんだろう。
婚約者という話も、さらに現実味を帯びてきた。
「ねぇねぇ、それでさ。例の話なんだけど……いい加減、いつにするか決めてくれた?」
「決めるも何も、別に特別なことをする必要はないだろう。お互い、もう良い年なんだから」
「もうっ。透くんって、ほんとそういうところデリカシーないよね。こういうのは、年齢とか関係ないの。私が気にするタイプなの、知ってるでしょ?」
もう、それ以上ふたりの会話を聞いていることはできなかった。
私は思い切って足を前に出すと、たった今歩いてきた道を必死に戻った。
通用口から出られないのなら、正面玄関から出ればいいと気がついたのだ。
この時間はもう外来は終わっているけれど、御見舞に訪れる人たちがいるはず。
だから、正面玄関も空いているはずだ。
私はギリギリの理性を掻き集めて走ることはせず、とにかく早足で廊下を歩いた。