エリート外科医の灼熱求婚~独占本能で愛しい彼女を新妻に射止めたい~
「は……っ、ハァ、はぁ……っ」
その間も、たった今聞いたばかりのふたりの会話が頭の中で繰り返される。
最後に聞いた会話の内容は、きっと、結婚に向けての具体的な何かが動いてるんだと想像させた。
近衛先生は、『別に特別なことをする必要はないだろう』と言っていた。
だから、もしかしたら結婚式の話とか?
それとも、両家の挨拶とかそういう話かもしれない。
「もう……っ、最悪……」
こんなことなら、知らないままのほうがよかった。
私は、近衛先生に騙されていたのかな?
ううん、もしかしたら近衛先生も婚約には乗り気ではないとか……って、さっきの感じだとそういう雰囲気でもなさそうだ。
じゃあ、近衛先生が私にくれた言葉たちは、いったい何だったの?
あの夜のことは、全部嘘だったってこと?
「ふぅ……っ、ハ……ッ」
一刻も早く病院から出たかった。
とにかく一秒でも早くここから逃げ出したくて、私はひたすらに歩き続けた。
──去り際に、ほんの一瞬だけ見えた梨沙子さんの姿は、いかにも良いところのお嬢さんといった雰囲気だった。