エリート外科医の灼熱求婚~独占本能で愛しい彼女を新妻に射止めたい~
『家柄的にも、誰も文句は言えないんじゃない?』
今度はお手洗いで話していた人の声が脳裏をよぎる。
……梨沙子さんは、近衛先生に釣り合う人だ。
ようやく病院の敷地を出て、ふと足を止めた私は、ショーウインドウに映る自分の姿を改めて見つめた。
着古したグレーのパーカーに、エプロン。履き慣れたジーンズに、スニーカー。
背中には配達用のバッグを背負って、今日も髪は無造作に後ろでひとつにまとめているだけ。
「……っ」
きっと、近衛先生の隣にいるのが私じゃあ、誰も納得なんてしないだろう。
それはそうだ。近衛先生は大病院の跡取りで、優秀な脳外科医。
かたや私は町の小さな定食屋の娘で、これから夢を追いかけようというフリーター。
「……そんなの、最初から、わかってたはずなんだけどなぁ」
つい、声が濡れた。
自分と近衛先生じゃ、釣り合わないってこと。
ちゃんと、頭ではわかっていたつもりだった。
『百合、好きだよ』
だけど、近衛先生が私を選んでくれたから、こんな私でもいいんだと胸を張れた。
近衛先生のおかげで過去を清算できたし、新しい道を見つけることもできたんだ。