エリート外科医の灼熱求婚~独占本能で愛しい彼女を新妻に射止めたい~
「……だから、今さらウジウジ考えていても仕方ないよね」
パチン!と両手で頬を叩いた私は、深呼吸をしてから顔を上げる。
どう転んだって私は、町の定食屋の娘で二十六歳のフリーターだ。
でも、だからって悲観的になったりしない。
だって私は野原食堂を営む両親を尊敬してるし、野原食堂のことも大好きだから。
家柄がなんだ。そんなの、関係ない。
「だから、問題は私自身だ……」
もう一度、ショーウインドウに映った自分を見る。
これが、今の私。もう絶対、目をそらさないって決めたから。
「──よし、戻ろう」
そうして私は背筋を伸ばすと、顔を上げて前を向いた。
足は真っすぐに、野原食堂へ。
そのまま近衛先生のいる中央総合病院に背を向けて、私はもう一度歩き出した。