エリート外科医の灼熱求婚~独占本能で愛しい彼女を新妻に射止めたい~
「まだ会って間もないのに、さすがにそれは、図々しい?」
「い、いえ! 近衛先生さえ大丈夫なら、私は全然構わないです!」
反射的に答えていた。
すると、私の返事を聞いた近衛先生は、
「じゃあ、これからは百合って呼ばせてもらう」
なんて、さらりと言ったあとで余裕たっぷりの笑みを浮かべた。
「百合、昨日は本当にありがとう。それと、届けてもらったチャーハンも、美味しかった」
ただ出前のお礼を言われただけなのに、心臓が今にも爆発しそうなほど高鳴っている。
心なしか、近衛先生の声も、向けられた笑顔も甘く感じた。
私の気のせいかもしれない。自意識過剰?
けれど、考えすぎとも言い切れないのは、近衛先生が私から一切目をそらす素振りを見せなかったからだ。
「百合さえよければ、今度是非どこかに──」
「す、すみません! 私、帰らないと!」
「え?」
「いつも本当に、ありがとうございます! これからも野原食堂を、どうぞよろしくお願いします!」
「あ……」
そうして私は勢い良く頭を下げると、足元に置いてあった配達用カバンを背負って脱兎のごとくその場を去った。
心臓はバクバクと鳴り続けている。
エプロンのポケットに忍ばせたメモを握りしめた手は、ほんの少しだけ震えていた。