エリート外科医の灼熱求婚~独占本能で愛しい彼女を新妻に射止めたい~
「百合ちゃーん! こっちの注文もお願い!」
昼時の定食屋は言うなれば戦場だ。
特に平日は貴重な昼休みに訪れるサラリーマンが多いため、とにかく時間との勝負。
お客さんたちを待たせないためには、いかに効率的にオーダーをまわし、フロア全体に目を配るか。
できた料理はすぐさま運んで、お客さんが席を立ったテーブルはなるべく早く片付ける。
洗い場には死ぬほどお皿が溜まっているけれど、それらは忙しさのピークが過ぎた頃にまとめて洗えば問題ない。
「お父さん、三番テーブルにレバニラ定食をひとつ! あと、常連の内田さんは回鍋肉ね。いつも通りピーマン抜きで!」
私が伝票片手に威勢よく声を張り上げれば、カウンターに陣取った常連客のひとりが、「ヒューッ」と小さく口笛を吹いた。
「百合ちゃーん、すっかり野原食堂の看板娘が板についてきたね」
「谷口さん……。私、冷やかしで口笛吹く人なんて漫画の世界だけかと思ってましたよ」
「ハハッ。手厳しいなぁ。でも俺、昔から吹くよ〜。なぁ、ゲンちゃん。俺、ガキのころから吹いてたよなぁ」
〝ゲンちゃん〟とは、ここ【野原食堂】の店主であり、私の父親のことだ。
もう何十年と厨房に立ち、年季の入った中華鍋を自分の体の一部のように豪快に振っている。