エリート外科医の灼熱求婚~独占本能で愛しい彼女を新妻に射止めたい~
「いらっしゃーい! はいはい、内田さんは回鍋肉ね。いつも通りピーマン抜きで!」
近衛先生から連絡先が書かれたメモを受け取って、早一週間が過ぎた。
けれど私は、今日に至るまで一度も先生に連絡はできずにいた。
というのも、あのあと私は情けないことに熱を出し、二日ほど寝込んでしまったのだ。
『仕事を辞めて帰ってきてから、うちでもろくに休むことなく働き詰めだったし疲れが出たのよ』
そう言ってくれたのは、もちろんお母さんだ。
お父さんは当然のごとく、働かない奴はグズだと私のことを厳しく責めた。
「やっぱり、たっちゃんがいると店の活気が違うなぁ」
「ハハッ。内田さん、どうせ俺がいないときには、百合がいると店が明るいとかなんとか言ってたんだろ?」
でも、不幸中の幸いと言っていいのかわからないけれど、私が倒れた日の翌日は野原食堂の定休日だった。
さらに、その翌日には新婚旅行に行っていた兄が旅先から帰ってきたおかげで、私はゆっくりと静養することができたのだ。
「どうだい、たっちゃん。ハワイは楽しめたかい?」
「めちゃくちゃ楽しかったよー。まぁ、何より奥さんが楽しんでくれてたのが、俺は最高に嬉しかったけど」
タツ兄ちゃんの惚気に、常連さんたちが「熱いね〜」なんて面白そうに冷やかした。
私はそれを微笑ましく見守りながら、休んでいたぶんを取り戻すように、人一倍働いた。