エリート外科医の灼熱求婚~独占本能で愛しい彼女を新妻に射止めたい~
「そうそう。百合ちゃん目当てで通い始めた若いやつもいるっていうよ? それに、百合ちゃんみたいな可愛くて気が利く子なら、嫁にほしいって男はたくさんいるでしょうよ」
「あ! そういう話なら、ぜひ、うちの長男の嫁にお願いしたいなぁ」
「いやいや、そこは俺んとこの次男がいい。今の時代、嫁ぐなら長男より次男っていうだろ?」
常連さん同士の間で、話がだんだん思いもよらない方向へと逸れてきた。
常連さんたちは、こういう昔ながらの悪ノリが好きだ。
だけど、私はそのおかげで前職と私生活のことから話題が逸れてくれて、内心でホッとした。
「アハハ。私をお嫁さんに貰っても、良いことないですよ〜」
空元気と作り笑顔で対応すれば、常連さんたちはまだ話し足りないといった様子で前のめりになる。
「いやいや、百合ちゃんがうちの息子の嫁になってくれたら大歓迎!」
「無理無理、百合ちゃんはうちの息子の嫁になるんだから、お前んとこの息子にはやれねぇよ〜」
おじさんたちは、案外この手の話をしだすと長い。
私は曖昧な笑みを浮かべて、とにかくその場をやり過ごそうとした。
「……残念ながら百合さんは、どちらの息子さんのものにもなりませんよ?」
そのときだ。不意に凜とした声が、常連客のふたりの間に割って入った。
「え……?」
一同は驚いて、声の主へと目を向ける。
そうすれば近衛先生は頬杖をつきながら、何故か冷たい笑みを浮かべていた。