エリート外科医の灼熱求婚~独占本能で愛しい彼女を新妻に射止めたい~
 

「誰の息子が嫁にもらうとか……くだらない。そっちこそ、悪い冗談だろう」

「近衛先生……?」

「俺はこの一週間、百合から連絡がこないことばかり気にして、たまらず会いに来てしまったっていうのに……。俺以外の男が百合に近づいていたのかと思ったら、もう我慢の限界だ」


 そう言うと近衛先生は、私を壁際に追い詰めて手を置いた。


「……自分でも、こんな気持ちになるのは初めてで戸惑っている。そもそも百合とはまだ、数回しか話したこともないのに、どうかしているよな」


 そう言う近衛先生の目に男の人らしい熱っぽさがにじんでいるのは、多分、私の気のせいではないと思う。

 耳にも、ほんのりと恥じらいの赤が差していた。

 余裕のない近衛先生の顔を見たら胸がドキドキと高鳴って、私はもう、ハッキリと尋ねずにはいられなかった。


「で、でも。どうして近衛先生みたいな人が、私を気にかけてくれるのか、私には理由がわかりません」

「本当に、どうしてだろうな。でも、今思えば、あのとき百合が残したメモを見たときに、既に俺の中では今の感情に通ずる何かが芽生えて始めていたんだろう」


 近衛先生の言う〝あのとき〟とは、私が初めて医局に出前を届けに行ったときのことだ。


「夜に出前を届けに来た本人も疲れていただろうに、赤の他人を気遣うことができる優しい人だと、興味が湧いた」


 そして、病院を脱走してきた田所さんの一件を経て、近衛先生は私に強く惹かれるようになったのだという。

 
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