エリート外科医の灼熱求婚~独占本能で愛しい彼女を新妻に射止めたい~
「で、でも、それだけで近衛先生みたいに完璧な人が私に興味を持ってくれるなんて信じられないです……」
多分、私の意見は間違っていない。
だって、近衛先生なら寄ってくる女性は星の数ほどいるだろう。
その中には魅力的で素敵な女性がたくさんいるだろうし、わざわざ足元に転がっている石みたいな私を選ぶ理由なんてないはずだ。
「田所さんを連れ戻しに来た看護師のひとりを覚えてる?」
「え……?」
「彼女、あのあと俺のところにお礼を言いに来たんだけど、田所さんと百合との話をいろいろ教えてくれたんだ」
近衛先生が言うには、病院に帰った田所さんは、私とどんな話をしたかということを、看護師さんたちに嬉しそうに語ったらしい。
「本当に、久しぶりに楽しい話ができたって言っていたらしい。田所さんは、それまで治療やリハビリにも後ろ向きだったということだが、早く元気になって野原食堂に麻婆豆腐を食べに行くんだって張り切ってるって言ってたよ」
近衛先生の話を聞いた瞬間、思わず目に涙がにじんだ。
「よかったぁ……。田所さん、あのあとも病気を治すために、頑張ってるんですね。本当に本当によかった……」
胸を撫でおろしたら、口から安堵の息がこぼれた。
あれから、田所さんは大丈夫だろうかとずっと気になっていた。
また病院を脱走しないか心配だったけど、今の話を聞く限りでは大丈夫そうだ。